2020年12月28日

てんかん症例検討会が開催されました

12月16日にすずかけクリニックに於いて、てんかん症例検討会が開催されました。

患者様のプライバシーを考慮し、個人情報に関する内容は若干変更してあります。

症例1:頭の中で音がした後に手足のけいれんが現れる方の症例です。症状はてんかんではなく頭内爆発音症候群と考えられ、今後の治療について検討されました。

症例2:起床時に筋肉痛、口内炎などができており、睡眠中の発作が疑われる方の症例です。覚醒時にも何回か強直を伴う発作が出現していますが、病歴の中にはてんかん発作として説明が難しい発作もあり、今後は睡眠中の発作と思われる症状に注目して経過を観察することになりました。

症例3:幼少期よりてんかん発作があり、5年程前からPNESを疑われる発作が出現している方の症例です。病歴からてんかんである事は間違いがないが分類は不明、今後は幼少期の脳波所見の確認、発作動画を家族に撮影してもらう、などの方法で検討していくこととなりました。

症例4:過去の症例検討会で後頭葉てんかんと診断された方の症例です。前兆のみが継続しており、今後はNaチャンネルブロッカーの処方により前兆の消失を確認していくことになりました。

次回のてんかん症例検討会は、令和3年1月13日にすずかけクリニックにて開催予定です。

2020年12月26日

『第15回全国てんかんリハビリテーション研究会』がオンラインにて開催されました。

一般演題15回リハ研チラシ
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①山口規公美氏(日本橋神経クリニック)
『外来でのMOSESの取り組み』:外来で2日間という短期間で集中してMOSESを実施された報告でした。参加者の満足度はとても高く、今後も積極的に取り入れる予定との事でした。

②遠藤美幸氏(すずかけクリニック)
『PNES患者へ多機能垂直型施設の支援とQOLの変化』:福智会でのPNES患者への支援についての報告でした。PNESの治療には外来診察だけではなく、デイケアやB型作業所などでの行動療法が重要であることが報告されました。

③那須裕輔氏(国立精神・神経医療研究センター)
『てんかん学習プログラムとその後の支援』:てんかん学習プログラムが非常に困難だったに症例についての報告でした。

④中澤正氏(公益社団法人日本てんかん協会神奈川支部)
『てんかんがある方々の生活支援・就労支援~障害福祉サービスとてんかん』:障害福祉サービスの現場では、てんかんへの理解が未だに進んでいないことが報告されました。職員は発作への不安を抱えており、今後はSNSなどでの勉強会の告知が効果的ではないか、との提案もありました。どの発表もとても興味深く、活発な討論がなされました。

基調講演

【診療報酬改訂と持続可能てんかんリハ】
中里信和先生(東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野 教授)

心理職が国家資格になったにも関わらず、現在の診療報酬制度では、てんかんリハビリテーションでも使用しているMOSESが単独で点数がとれないなどの問題点を抱えています。

てんかん患者のリハビリテーションに関わる算定が認められるようにするには、エビデンスを明確にしなくても、100例の事例検討を積み重ねる事で可能になるそうです。今後は様々な施設での事例検討を集め、診療報酬の改訂を目標にする提案が中里先生からありました。

特別公演

【ICTやAIを活用した精神科医療の展望】
岸本泰士郎先生(慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室 専任講師)

米国のオンライン診療を誰が利用したいと思っているか、何に利用できるのかという調査では、13歳以下のお子さんを持つ親や、現在疾患にかかっている方の利用の希望が高いという結果でした。

現在日本ではひきこもりの方や強迫性障害患者には遠隔診療の方が最適ではないかと考えられており、試験をおこなっているそうです。高齢者のアルツハイマー患者などに対する認知機能検査も実施されています。

最近ではICTによる患者の重症度の判定や、話し方の特徴からAIを使った認知症早期発見、などに対する試験も実施されています。米国ではうつ病患者さんの治療に対する満足度は遠隔と対面で有意差がないと報告されており、今後は日本でも諸外国に遅れをとらないように、遠隔治療をアクティブにしていく必要があるそうです。

とても興味深い、学びある講演を聞く事ができました。

2020年12月 9日

12月家族会

直前となりましたが、今月は12月11日に開催いたします。

テーマは設けず、フリートークとしたいと思います。

18:00~19:00に、すずかけクリニック4階にて行います。

2020年12月 3日

第41回名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会が開催されました。

名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会
※画像をクリックすると拡大されます。
11月28日に第 41 回名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会が開催されました。

今回は会場と、オンライン両方を利用しての開催となりました。


【一般公演 】 『統合失調症治療におけるアセナピンの位置付け』
座長:すずかけクリニック 福智寿彦先生
演者:愛知医科大学 藤田貢平先生、藤田先生

名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会講演の「統合失調症治療におけるアセナピンの位置づけ」に参加しました。腸炎を患っている統合失調症の患者さんに対してアセナピンを投与するお話しを聞き大変おもしろいと感じました。

アセナピンは舌下粘膜から吸収され腸管を介さず中枢に作用されるということで負担も少なく、また効果の時間差もあると学び患者さんに対し期待性が高い製薬だと感じました。

【特別公演】『重篤な身体疾患を抱えた患者さん、ご家族の精神的ケアがん患者・家族との支持的関わりを中心に』
座長:愛知医科大学 精神 科学講座 教授 兼本浩祐先生
演者:名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野 教授 明智龍男 先生

名古屋サイコソーシャルリハビリテーション研究会特別講演は名古屋市立大学病院の明智龍男先生の講演でした。明智先生はサイコオンコロジー(精神腫瘍学)を専門とされており、今までに沢山の患者さんの死を間近でみてきたそうです。

日本人の死因第1位はがんであり、 今や誰もがなりうる身近な病気となっています。そしてがん患者さんやそのご家族は心に大きな問題を抱えています。がんと診断された方の1年以内の自殺率は、そうでない人の24倍 であり、そのご家族も、うつ病を発症したり、自殺される方が多いと報告されています。

先生は長年の経験から、 まず患者さんとの信頼関係を築いたうえで、その人の経験している苦痛を真の意味で理解する事はできないけれども 、 苦痛を理解するための努力をすることができるとお話されるそうです。

そして様々な手法で患者さんの心や体のつらい症状を和らげる事に尽力されています。ディグニティセラピーは、終末期の患者さんにご本人が大切にしている事を大切な人に伝えるというプログラムです。

これは、参加者の満足度は非常に高いそうですが、意外にもほとんどの人がこのプログラムを受ける事を拒否されたそうです。 日本は死を否定する文化があるからではないだろうか、との事でした。

また、がんの慢性疼痛に対するアクセプタント&コミットメントセラピー( ACT )の認知行動療法の話もとても興味深く、痛みをコントロールしようとする事自体が問題である、というものでした。 講演は先生の温厚なお人柄がにじみ出るお話ばかりで、先生に話を聴いて もらい救われた患者さんやご家族はたくさんみえると思います 。

座長である兼本先生が、私が死を迎える時は是非明智先生にベットサイドにきてもらいたい、という言葉がとても印象的でした。

2020年12月 2日

てんかん症例検討会が開催されました

11月18日にすずかけクリニックに於いて、てんかん症例検討会が開催されました。

患者様のプライバシーを考慮し、個人情報に関する内容は若干変更してあります。

症例1:発作が日単位で出現する側頭葉てんかんの方の症例です。薬物治療では抑制出来ず手術の適応が検討されました。発作時脳波・MRIでは焦点がはっきりと確認出来ず、さらなる精査が必要との結論でまとまりました。

症例2:生後まもなく発作が確認された症候性部分てんかんの方の症例です。現在も発作は抑制されておらず、今後の治療方針や家族・本人への支援方法が検討されました。

症例3:脳波所見に特発性全般てんかんの所見がある方の症例です。強直発作のみで間代発作が確認出来ず、閉眼して体が突っ張るなど典型例とは異なる発作が確認されています。合致しない点は多いいもののIGEの可能性は高いという結論でした。

症例4:口をモグモグさせ、意識減損がある方の症例です。発作時動画からはてんかんであるとは断言出来ない、とういう結論でまとまりました。現在AEDの投与により発作は抑制されており、うつ症状も改善されていることから薬物治療を継続し経過観察をしていくこととなりました。

症例5:一点をみつめて反応がなくなる発作が出現している方の症例です。脳波所見、MRI、発作症状から側頭葉てんかんだろう、との結論でまとまりました。

次回のてんかん症例検討会は12月16日(水)にすずかけクリニックにて開催予定です。