医療法人福智会 すずかけクリニック

てんかん・統合失調症・うつ病治療 名古屋・今池の精神科クリニック

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てんかん治療に必要なこと(2) 発作を止めることだけが治療目標ではない

てんかん治療に必要なこと(2) 発作を止めることだけが治療目標ではない

人は、病気や障害をもった人を前にすると、その「病気」や「障害」の部分をクローズアップして見てしまいがちです。

でも、仮に同じような症状を抱えていたとしても、ひとりひとりの人生は異なります(当たり前のことですが)。

てんかんをもった人を「てんかん患者」としてのみ扱っていると、そのことが見落とされてしまいます。
ですから治療者や周囲の人は、その人の症状や障害以外の面=人としての本質的な面に目を向けていなければいけません。

また、てんかんを治療するということは単に「発作を止めること」だけを意味するわけではないと私は考えています。

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発作以外の精神症状による問題や、周りからの偏見があることにより社会参加できないという人がいます。
こうした理由によって、その人が「自分が納得できる人生」を送ることができないのであれば、たとえ発作がなくなったとしても治療が終わったとは言えません。

私はてんかん治療で最も優先して考えなければいけないのは「社会的な側面」 ― てんかんを治療する上での「良い環境」を整えること ― だと思っています。

 

とはいっても「良い環境」とはどんな環境なのでしょう?

てんかんを正しく理解している社会環境 ― これはもちろん大切です。
ですが、大事なのはそれだけではないと私は思います。

 

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障害や病気をもった当事者が、たとえ障害を抱えていたとしても自分らしい人生を追求して、「自分の意志」で社会参加や、その他の自分自身の人生に関する大事な選択肢への決定権をもてるようになる。
これを
リカバリー」といい、精神保健の領域で重要視されている考え方です。

私は、てんかんという病気自体を正しく理解することだけでなく、「リカバリー」の考え方についてもよく理解している社会、つまり、当事者の「リカバリー」が進みやすい環境が何より必要なのだと考えています。
そして、先ほど述べたように、当事者の「病気」や「障害」の部分だけをクローズアップして見るという行為は、「リカバリー」の妨げになります。そうした視点は、当事者から選択肢を奪う要因になるからです。

そして、「リカバリーが推進される環境」という意味での「良い環境」が整っていることで、薬物療法や心理療法もより効果的に治療の中で活かされるようになると思われます。
例えば、どの薬を使うかというときや、薬の量を増やすかどうかというとき、もっと言えば薬を飲むべきかどうかというとき。
適切な説明や助言を基に本人が「選択」することが許されなければ、本人からすれば薬を飲むことへの抵抗感が生まれるのは当然ですし、医療への不信感も強まる一方となることでしょう。

 

発作の回数が多かったり、薬の量を増やさざるを得なかったり……そうしたことが原因で、人生の選択肢自体を狭めざるをえないこともあります。
それでも、発作の頻度や病気の重症度に関係なく、本人に「社会に参加したい」という気持ちや、「新しいことに挑戦したい」という意志が少しでもある限り、「リカバリー」は進めることができると言われています。

そうして「リカバリー」を目指して新しいことに挑戦したことで、結果的に発作が減少したり、気分が安定するというのも珍しいことではないのです。
最初は周りからの支えがたくさん必要でも、こうした経験を積み重ねていくことで、最終的には自力で「良い環境」を作り出していくことも可能になると思います。

 

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「発作は止まったけど、自分で何を決めることが許されない、治療の進め方にしても自分の意見を尊重してはもらえない」……というのでは、本当の意味で治療が成功したとは言えないと私は思います。

「自分こそが人生の主役だ」「自分の人生に納得できた」

発作のコントロールに加えて、こうした感覚を実感できてはじめて治療が成功したと言えるのではないでしょうか。
(これはてんかん以外の精神疾患にも当てはまることです)

その意味で、てんかん治療=発作を止めることだけを目的にすべきではないのです。

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